カメラの電子化の引き金になったロームLED - 事務局
2024/02/08 (Thu) 17:06:32
佐藤社長直轄の「LED製造部」の最初の仕事は、1976年(昭和51年)「旭光学」から受注した「ペンタックス MX」用のカスタムLEDだった。
用途はカメラのファインダー内に適正露出の表示をするもので、「赤-黄-緑-黄-赤」と点灯するまるで信号機のようなLEDアレイでファインダーの中に入るサイズの小さなもの。試作段階ではエッチングでリード・フレームを製作し、5個のLEDチップを銀ペーストで一直線に接着、金線を用いる熱圧着ボンディングで配線するという至極単純なものだった。外形はIC用のSIPモールド試作金型でたまたま余っていたものが有ったので、その金型を流用した。
そんなワケで、いとも簡単に試作品は出来上がった。当時のカメラの世界は、現在の真逆で完璧なメカ屋の世界で、シャッター速度(露出)と絞りの設定は「露出計」という光量を測定する別の機材で計測するものだったのを、カメラに一体化するという単純な発想だった。
「ペンタックス MX」で大トラブル - 事務局
2024/02/16 (Fri) 10:01:57
ところが、「ペンタックス MX」が発表されて、量産開始となった途端にエライ事になった。
何しろカメラのファインダー内で光るので、明る過ぎると目潰しになってしまう。ボンヤリと光らなければならない。もともと、そんな事を想定してLEDチップを開発したわけでは無いので、実際に装着して見ると明る過ぎるものや全く光らないものなどバラバラだった。しかも、モールド・タイプなので工程途中でのチェックが出来ない。樹脂モールドが終了しリード・フレームを切り離して最終の段階でアウトとなる。結果、不良品を大量に生産することになってしまった。
そんなワケで、開発担当の神野勝課長と川上尚臣クンの両名は「火ダルマ」になってしまった。問題はその火消し役が「ウ~サン」に回って来た事だった。ワイヤ・ボンディングをする前に、針に電線をつないで点灯試験をするという方法と、ウエハの段階でプローバーの規格を厳しくして、何とか歩留まりを上げる事が出来たが、これを教訓としてカメラ用のディスプレイでモールド・タイプというのは二度と設計しない事になった。
「カメラ・ロボット:キャノン A-1」の大ヒット - 事務局
2024/02/16 (Fri) 10:05:20
この「旭工学(ペンタックス)」のカスタムLEDを皮切りにして「キャノン」「ニコン(日本工学)」等のカスタムLEDの雪崩現象が起きた。勿論、その度に「火災」が発生したが、そこは「東洋電具製作所・自衛消防隊初期消火隊」、火消しはプロだった。ここから世界のカメラ業界の急激な電子化が始まった。カメラにバッテリーを搭載することで、後の内臓ストロボや自動焦点など技術革新につながった。更にフィルムの代わりにCCD素子を搭載したのが現在のデジタル・カメラだ。まるでコンピュータのようになってしまったカメラの電子化の原点が、このカスタムLED搭載の「ペンタックス MX」だった。それにしても細かい製品ばかりで大変だった事を覚えている。